「人間存在にとって不可欠な体育授業への接近」
2年前に編著で出版した『初等体育授業づくり入門』(大修館書店)の序章において、「近未来の人間は火星人になるだろう」という話を書いた。それは、「か細い体躯、頼りない手足、異様に大きい頭部」といったイメージから、「身体性」と「社会性」を欠落させた人間存在のあり方を示しているようだと説明したのだが、これが実際、人間にとって「いかに苦しいこと」であるかをここ数ヶ月、大人も子どもも含めて多くの人々が感じ取ったのではなかろうか。「他者とともにコミュニケーションをとりながら身体を存分に動かして楽しむ」ことが「どんなに素晴らしいことであるか」「人間にとっての根源的な欲求であるか」を思い知らされたような気がするのである。
かつて、「心と体の一体化」が叫ばれたとき、その表現は「運動って楽しいなあ、友達と一緒に運動するってもっと楽しいなあ」というメッセージとして理解してよいのではないかと記述したことがあるし、今でもそう思っているけれど、このような人間的欲求のベースを大切にしながら、体育の授業を新たに構築していく手がかりを得たいものである。
体育授業研究会 会長 信州大学 岩田 靖
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□(巻頭言)
「人間存在にとって不可欠な体育授業への接近」
体育授業研究会会長 信州大学 岩田 靖
□令和2年度体育授業研究会総会について
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