「負けられない戦いはそこにはない」
今年はサッカーW杯日韓大会から20年目に当たる。そこに至る前の「ドーハの悲劇」に泣き、「ジョホールバルの歓喜」に沸いた身からすると、月日の経つ速さとサッカー界の目覚ましい進歩に目を瞠るばかりである。
しかしW杯出場を巡って連呼される「負けられない戦いがそこにはある」というフレーズを私は認めることができない。スポーツの世界において、無責任に責任を選手に押し付け、悲壮感をあおるこのフレーズは、まさに日本の勝利至上主義を体現する悪言であり、体育科教育のみならず人間形成に悪影響を及ぼしている。指導者の体罰、保護者の野次がなくならないのも、この勝利を過剰に求める姿勢に起因している。
担任時代、ボールゲームの学習で、勝ちにこだわるあまり、チームの雰囲気を壊したり、友達を攻撃したりする子どもによく問いかけた。「今楽しい?」
他者を傷つけて得た勝利は後味が悪く、チームで全力を尽くした上での敗北にまさることはないはずである。最近は小学生の全国スポーツ大会を廃止して、過剰な勝利至上主義にダウトをかける動きもある。何のためにスポーツをするのか、スポーツ・体育に関わる身として、常に子どもたちに「楽しくないスポーツ・体育をさせていないか」を考えていきたい。
東京学芸大学附属竹早小学校 佐藤洋平
◆◆◆◆◆◆◆◆ CONTENTS◆◆◆◆◆◆◆
□ 巻頭言
「負けられない戦いはそこにはない」
東京学芸大学附属竹早小学校 佐藤洋平
□ 第26回体育授業研究会新潟大会について
・参加意向調査アンケートのお願い
□ 事務局より
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