「わたし達のルーツとは」
もうずいぶん昔に、日本でもテレビ放映された「ルーツ」という米ドラマが大きな人気を博したことがあった。物語はアフリカから連れてこられた黒人が米国社会で何代にもわたる差別を乗り越え、市民権を獲得する過程を描いた作者の自伝をドラマ化したものだった。当時は日本でも反響を得て、ルーツが流行語となり個人のルーツ探しがブームになった。
さて、私たちが日々取り組む体育の授業研究は、いつごろから組織的に行われだしたのだろうか。体育授業研究の成果を集大成した日本の体育科教育学のルーツはどのようなものなのか。体育という教科は、1872年の学制公布後に「体術」として始まり、「体操科」「体練科」を経て、戦後「体育科・保健体育科」として今に至る。しかし残念ながら、研究の「ルーツ」はよくわかっていない。
どうも、第一次大戦後の特需景気を受けて、国民体力増強と極東選手権大会に向けての競技力向上を国策として、東京渋谷に1925年設立された「国立体育研究所」が体育科教育学誕生のルーツらしい。残念ながら終戦で組織は解体されたが、設立後10年余で体育科教育や競技に関する、実に456件の研究が発表されている。研究所に設けられた「体育研究会」での、「体操科教授ノ実際的研究(1929年)」「低学年体操科教材遊戯化ノ問題ト其ノ実際(1931年)」など多くの研究が残されている。
今月、大修館書店から日本体育科教育学会編の「体育科教育学研究ハンドブック」が発刊された。体育科教育学研究の現代的成果が多面に亘って分かりやすく述べられているが、体育授業研究のルーツと系譜、その発展について書く機会を頂いた。私たちの「今」は、このルーツと共にある。ご一読いただければありがたい。
元早稲田大学 友添秀則
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□ 巻頭言
「わたし達のルーツとは」
元早稲田大学 友添秀則
□サークル提案研究(第5期)の募集について
研究委員長 東京学芸大学 鈴木 聡
□ 令和3年度体育授業研究会総会について
□ 事務局より
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